親族間で土地の貸し借りをする場合、地代を払っていない場合もあると思います。
しかし、自分が所有していない土地を使用しているのですから、法律上では借地権が発生している状況でもあります。
借地権にも価値がありますから、地代を払わない場合、この借地権を無償で譲り受けた(贈与された)と言われても否定できない状況です。
そこで、税務署に対して、土地の利用状況を理解してもらうために「土地の無償返還に関する届出書」という書類が必要になります。
「無償返還」(無料で返却する)という言葉が入っていることからも、なんとなく想像ができると思いますが、この届出書は、『土地を無償で借りている場合』に提出する書類です。
土地を無償で借りている人は、この書類をどんな時に提出しなければならないのかを知っておくと良いと思います。
借地権の認定課税とは?
誰かから土地を無償で借りて使っていた場合、法律的に見ると「借地権をもらった」という扱いを受けることになります。
具体的には、個人所有の土地を、自分又は子供の法人(会社)が使用しているような場合です。
本来、お金を払って借りるべき財産権を、無料で手に入れているので、実質的には「もらった」のと同じ扱いをされてしまうのです。
借地権をもらった形になる以上は、この借地権を利益とみなして税金がかかってきます。
土地の地価が高い場所では、高額な税額になることもあるでしょう。
このように、土地を無償で借りた時に課税される税金のことを『借地権の認定課税』と言います。
認定課税を回避する方法
借地権の認定課税は、土地価格に対して相当の地代を貸主に支払うことで回避することができます。
地代については、土地の状況等にもよりますが、6%前後であれば問題ないと言われています。地代が発生していれば、有償で借りていることになりますから、文句を言われる筋合いはないという事です。
しかし、場所によっては、意外に高額な地代となることもありますので、認定課税に不服を唱える人も多いです。
確かに、利益を目的としていない土地の貸し借りについて、全てを同様に扱われては困りますよね。
世間では、社長個人の土地を会社で使用しているようなケースがよくあります。
これに、いちいち高額な地代を支払わせるのは、経済活動を邪魔していることにもなり兼ねません。
そこで、土地の無償返還に関する届出書を税務署に提出すれば、認定課税の呪縛から解放してもらえる制度ができました。(昭和55年に制度化)
簡単に言えば、「将来、無料で貸主に返還するなら、税金はとらないよ」という制度です。
この時、土地を無償で返還することを意思表示するための書類が、「土地の無償返還に関する届出書」で、借地権の認定課税を回避する方法となるわけです。
無償返還の手続きでの注意点
「土地の無償返還に関する届出書」は、個人と個人の貸し借りには適用されません。
貸主と借主のどちらか一方、若しくはその両方が法人でなければ利用できない制度となっています。
個人同士の賃貸借契約の場合、使用貸借で借地権の認定課税を避けることができる為、この制度からは外されているわけです。
使用賃借とは、無料で借りることを意味します。親子間や夫婦間の場合、利益を目的としない使用賃借なので、地代を払っていなくても課税されないという事になっています(国税庁による使用賃借通達)
書類作成の注意点
土地の無償返還に関する届出書は、意外に作成枚数が多い書類ですので(4通作成)、提出先等にも注意が必要です。
よく確認して手続きを行うようにしてください。
法律や制度は、知らない間に改正されていることもありますので、税務署等に確認しておきましょう。
その他の注意点としては、賃貸借契約書に土地の使用後は無償で返す旨を明記する必要があります。
税務署への提出時は、賃貸借契約書も一緒に提出する為、この点が明記されていないとこの制度を利用できなくなってしまいます。
近所にある不動産業者等に賃貸契約書の作成を依頼するとか、自分で作成を行うといった場合には、このような税務や法律上の注意点が見落とされる可能性があります。
この為、相続対策や、節税対策での不動産取引については、相続専門の不動産業者や、税知識に精通した不動産のプロに任せることをお勧めします。
その他、個別の土地利用状況等によっては、税の軽減措置等の適用を考慮する必要がある場合もあります。
ADVICE YOUにご相談いただければ、このようなリスクの見落としを防止できます。
土地の評価について
土地の無償返還に関する届出書を提出した際でも、土地評価の際には、民法上の借地権が存在していることが考慮されます。
借地権がある土地の所有者は、その土地の使用が制限されるので価値が下がるのです。
よって、土地評価額から、借地権に相当する割合を差し引かれる(減額する)ことになります。
相続の申告に慣れていない税理士に任せた場合、このような「税金を減額できるポイント」を見逃して計算してしまうことも起こり得ます。
税理士に任せて安心してしまうと、余計な税金を支払う事になることもあるのです。
この為、税理士の仕事をチェックするコンサルタントがいれば安心ですよね。
借地権評価額を考慮せずに相続税申告をしてしまった場合でも、相続人が亡くなってから一定期間内であれば、更正の請求も可能です。(相続税還付が受けられます)
税理士とは別に、このような細かいチェックをしてくれる相談先を持つと、安心できると思います。
その他、権利者や使用状況等によって、評価方法が変化する部分がありますので、複数の専門家の目を入れることが肝心です。
まとめ
個人から法人への土地賃貸借では、相続税評価も考慮して対処する必要があります。
早い段階から、税理士や相続コンサルタント等の専門家を入れて全体を把握するようにしましょう。
無駄な税金、無駄な地代を払わず、税軽減等の特典も考慮したベストプランを把握することが大切です。