不動産での相続税対策を講じていく際、不動産鑑定士と協力することで大きなメリットが生まれることがあります。
全てのケースを網羅するのは大変ですので、具体的で身近な事例をご紹介したいと思います。
具体例を通して、不動産鑑定士の仕事によって、相続対策上でどんな効果が期待できるのか理解できると思います。
不動産鑑定士が必要なのはどんな時?
不動産鑑定士が必要になるのは、不動産の正確な評価が必要な時です。
例えば、財産を贈与する場合や、親族間で売買をする場合等です。
また、法人に所有権を移す場合にも、正確な資産評価が必要になります。
通常、不動産業者によって取引価格が設定されますので、不動産鑑定士による評価は必ずしも必要なものではありません。
この為、一般的には依頼する機会が無く、どんな時に登場する資格者なのかイメージがわかない人も多いと思います。
不動産鑑定士は、「誰よりも正確に不動産を評価できる人」と考えれば良いと思います。
つまり、その物件にどれくらいの価値があるのかを公的に証明できる人という事です。
この為、税理士や不動産業者では評価が困難な物件等は、不動産鑑定士に依頼することになります。
不動産鑑定士の費用
不動産鑑定士に鑑定を依頼した場合、どれくらいの費用がかかるのか気になりますよね。
鑑定費用は、一般的な宅地(30~40坪)の場合、18~20万円位が相場だと思います。(1区画の目安です)
区分所有の場合や、調査が難しい広大地等の場合、鑑定費用が100万円を超えるケースもあります。
決して安いものではないので、本当に必要な場合だけ依頼することになります。
この為、不動産鑑定士の方々は、税理士やコンサルティング会社等からの依頼で仕事を受注することが多いわけです。
不動産鑑定士の活躍事例
あるクライアントが、高低差のある土地を所有していました。
この土地には、親族(娘)の自宅が建っており、無償で土地を貸している状態でした。
また、この土地は、生前に譲り渡した方が良い事情があり、親族間売買を行うことになりました。
親族間売買の価格決定は難しい
対象地は、相続税路線価から見れば、約3千万円程度の土地評価となる土地でした。
これを娘に売ろうとした時、通常なら3千万円前後で取引をすることになります。
親子間の場合、取引価格を安くしたいという思惑が働きます。
土地を売る側(親)からすれば、娘から受領する売買代金が相続税の対象になるのは本末転倒です。
相続税対策にならない(課税資産が増える)のなら、わざわざ売買をしなくても、相続で渡せば良いという結論になります。
実際、不動産取得税や譲渡所得税等の発生を考慮すると、親族間売買をしない方が良いケースも多いのです。
そこで、実勢価格(時価)よりも安い価格で取引する場合は、その根拠を示して取引する必要が出てきます。
このような場面で、不動産鑑定士が登場するわけですね。
みなし贈与に注意
買う側(娘)にとっても、安く土地が手に入る方が良いので、「なるべく安く取引したい」という事になります。
しかし、3千万円の価値がある不動産を、3千万円以下で取引する場合、「その差額を贈与した」という扱いを受けてしまう可能性があります。これが『みなし贈与』です。
税務調査でみなし贈与だと言われないようにするには、「取引価格の正当性」を示す必要があります。
不動産鑑定士によって、高低差による価値の減少や、土地の形が悪い事に対する評価減等を書面にしてもらうわけです。
不動産鑑定士によって、「この土地は、これくらいの価値しかありませんよ」という鑑定証明をしてもらい、税務調査に対抗できるようにするのです。
このケースでは、鑑定士によって約500万円程度の評価減を実現できました。
鑑定士を使うと損な場合もある!
不動産鑑定士による調査・鑑定の費用を考慮すると、取引価格が低くできたとしても、収支的に無意味な結果になることもあります。
ですから、税理士やコンサルタント等によって、入念な検証が必要です。
この事例では、親族間売買で『やや得が出る』事が判明した為、「収支で損にならないのであれば移転させた方が良い」という事になったのです。
将来の相続税(課税資産)が減る効果と、売買コストとを比較して、『得か、損か、損得無しか』を見極めてから実行することが肝心です。
たとえ利益がでなくても、所有者が変わることによってメリットが生じる場合もありますので、専門家による検証を行いましょう。
ADVICE YOUでは、クライアントに対し、このような検証作業を無償で行います。
東京・神奈川での相続税対策をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
不動産鑑定士を入れることで、土地評価が下がり、相続対策としての効果が高くなるケースがあります。
公正な形で、税理士では実現できない土地鑑定が可能になる場合があるので、固有の特徴を持っている不動産等は相談する意味があるはずです。
鑑定費用と相続税対策効果とを入念に検証する必要もありますので、専門家を交えながら相談していくと良いですね。