法人の逓増定期保険に国税庁の規制が入ります(2021年3月)

国税庁は、これまでにも法人契約等の逓増定期保険の税務上の取扱いについて見直しを行ってきました。

逓増定期保険は、全額経費で落とせる時代が終焉を迎え、節税対策としてのメリットが減少した経緯がありました。

更に、2021年3月、法人の逓増定期保険の名義変更時の評価についても規制をする動きが出てきました。

2021年6月には、この規制が現実化しそうです。

 

損金で処理できなくなった後も、逓増定期保険は、その解約返戻率の低さを活用する手法がありました。

解約返戻率の低い時期に、保険を法人から個人に名義変更するという方法です。

こうすれば、本来の価値よりも低い価格で資産を移すことができるからです。

 

これまで、法人から個人に名義変更する時の保険評価額は、解約返戻金で計算されることになっていました。

今回の検討内容によると、国税庁は実質的な課税手法の変更をすることになりそうです。

つまり、法人から個人に名義変更する時の保険評価額を高くするというものです。

 

新しく検討されている規制内容とは?

現在、検討されている変更内容は、「法人契約の定期保険を法人から個人に名義変更した場合に適用する」というものです。

更に、駆け込み契約をさせない趣旨だと思われますが、2019年7月8日以降に契約した定期保険を対象とすると言っています。

 

2019年7月8日以降に契約している人は、逓増定期保険の解約返戻金が帳簿(資産計上)額の70%未満であると、この規制の対象になります。

これを個人に名義変更しようとすると、帳簿上の評価額で保険資産を移した扱いとなるわけです。

 

今までなら、帳簿上で1千万円の価値がある保険商品の返戻率が10%だった場合、100万円で移すことができていました。

今後、これが「1千万円で評価しないとダメですよ」という課税方式になったということです。

 

節税対策として逓増定期保険に加入していた人達にとっては、手痛い規制が入ったという事になります。

多くの人達が節税をすると税収減への影響が大きくなりますから、必ず規制が入ります。

 

ですから、保険対策は、「規制が入る前に使っておく」という事も重要な対策になる面があります。

実際、2019年7月以前に逓増定期保険で節税活用していた人達は、その恩恵を受けられたわけです。

まさに早い者勝ちだったということですね。

 

個人の逓増定期保険はどうなるの?

法人も個人も、法改正等が行われれば、契約したタイミングによって逓増定期保険に加入した意味がなくなるリスクはあります。

解約時の返戻率が高ければ、それほどの損失にはなりませんが、メリットが無くなるのは残念なことですよね。

 

個人の場合、そもそも、逓増定期保険に入ろうと思う人の数が少ないです。

この為、個人の逓増定期保険を取り扱っている保険会社はほんの数社で、この事を知らない人も多いのではないでしょうか。

 

保険業界の販売員と話をしていても、「逓増定期は法人の保険」という認識をしている人が殆どです。

個人の場合、損金で落とせるわけでもないですし、資産を圧縮する必要があるケース(お金持ち)が少ないという事情があります。

 

個人で入る定期保険の場合、相続時に受け取るという目的ですので、相続時の評価方法にメスが入らない限りは今後も有効ということになります。

考えてみれば、普通に現金を持っていれば確実に等価評価になるのですから、「規制されないうちに入っておく」(評価が下がる方に賭ける)というのも1つの考え方です。

 

今回の出来事は、そのリスクをコントロールする方法があるのであれば早めにチャレンジしておくという視点も大切だと考えさせられる変更でした。

このように、一般的に広く知られてしまった手法は、国税庁からのメスが入り易くなります。

 

一方、断言はできない事ですが、誰も知らないような保険活用法があれば、しばらくは規制が入ることはないでしょう。

そんな活用法があれば、早めに実行し、誰にも教えずにおくのが得策ですね。(笑)

 

現行法規で合法的に相続税対策を行うための活用法については、逓増定期保険以外にもいくつか有効なものがあります。

このような発想力を持たない保険担当者に相談しても、相続対策の意味はありません。

まだ一部の人しか知らない保険の活用法等が知りたい方は、ADVICE YOUにお問合せください。

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